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| ・・・・わかれ・・・・ |
私は悩んだ。
このままでは でかいお腹をかかえて 犬と一緒に路頭に迷うだろう。
犬ごと実家に転がり込む事は、親と私の関係上、持ち出しても却下される話だった。
そして決断した。犬を貰ってもらう事を。
その日のことは あまり覚えていない。
犬が好きだったおもちゃを1つ持っていったと思う。水色の丸いものだ。
親戚の家に着いて、何か話しただろうか?
犬をお願いしますと、ちゃんと言っただろうか?
玄関にでたとき、犬は私を追わなかったと思う。
私の犬は私がそれきり戻ってこないなどと、思ってもいなかったのだろう。
どうやってその家を後にしたんただろうか?
なんであれ 私は犬を親戚の家に捨てたのだ。
あんなに素直で良い犬を、 私は捨てた。 |
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| ・・・・ノイローゼ・・・・ |
ただただ、自分が憎かった。
つれあいも憎かった。
私の犬を失わせたのはつれあいだと思った。
何でも自分の思い通りにしてきたあなたは、今度は私から犬までも奪ったのか。
そして大家に、犬が去ったことを報告しに行った。
そのとき、大家は言った。
「赤ちゃんができるんだから、ちょうど良かったわよ」
何が。
何がちょうど良かったというのだ。
あなたは私に今、
犬がいなくなってちょうど良かったと言ったのか。
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その言葉が許せなかった。
そして目の前が急に暗くなった。
私の心の中は絶叫で溢れていたが、どうにか口をつぐんだままその場を立ち去った。
その代わり、悲しみではちきれそうだった私の心は、 真っ黒な憎しみでいっぱいになった。
自分を含め犬を失う原因になったあらゆる人へ。
皆、消えてなくなれと。
私はそれからすぐ 犬のぬいぐるみを1つ作った。はさみでじょきじょきと切って 型紙もなかったが、それはあきれるほど 私の犬に似ていた。 |
| ・・・・ブービー・・・・ |
もう、人の犬になったのだから「ブービー」と名前で呼ばねばならないのだろうか。
ブービーは残りの生涯を、貰ってくれた親戚のご家族に可愛がられて過ごしたそうだ。
私は一度も会いに行かなかったと思う。
手放してからのブービーに関する記憶は、何か聞いたはずだが、殆ど覚えて無い。
頭が拒否していたのかもしれないし、今もあまり聞きたくはない。
世話になった親戚には申し訳ないが、どうか許してほしい。 あの一件は、私にとって悪夢でしかなかったのだ。
犬のぬいぐるみは、それから長く家にあった。
子供が少し大きくなったころのこと。子供が飾ってあった犬のぬいぐるみを持ち出してきて
「これブービーっていうんでしょ」
と言ったとき、私は凄い形相で子供を睨んで絶叫してしまった。
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「ブービーなんて言うな!この犬はあんたに何の関係もない!触るな!」
突然に爆発するような感情で、私は瞬時、それを止めることができなかった。
すっかり忘れていると思った憎しみの感情は まだ私の底に澱み続けていた。
すぐに、本当に「何の罪もない」子供に怒鳴ってしまった事をすまなく思い、 そのあとゆっくり説明してから 子供がぬいぐるみを触るのを許可した。
それから彼がブービーの名前を口にするたび、同じ感情が湧いては来たが、それは心を少し暗くするだけにとどまり、爆発することはもう無かった。 |
| ・・・・時は流れて・・・・ |
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後日談ではあるが。
私はブービーの事があってから、当時のつれあいに強い不信を抱き、それは年月を重ねるにつれて確たるものとなった。
そして今から10年ほど前に ついに悲願の離婚を果たした。
2回目の正直、今では優しい「夫」と一緒に、子供と犬2頭と動物に囲まれて暮らしている。
私の犬。
今はもういない、大切な 私の犬。
いつか私の命が終わる時、お前に会いに行こう。
私は今もお前が大好きだ。
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