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私の大切な犬 (2003年執筆)
・・・・前置き・・・・
心に澱を作るような辛く悲しい出来事というのは、自分の事として他人に語るには辛すぎて書けずにいたりするもののようだ。インターネット上にウェブサイトを作ってもう4年になるし、今までも過去の動物話はさんざんあちこちに書いてきたというのに、このことを書くのは 今回がはじめてになる。

そしてこの文章は、あきらかに暗く、陰鬱な話だ。しかも途中、犬と関係ない話も多い。
それはすべて、犬と別れなければならない事情と、憎悪の根源が何かというものを説明するために必要な文なので、それでも読もうと思う方は 我慢していただきたい。>>読まずに戻る
・・・・ビーグルの子犬・・・・
 もうかれこれ20年近く前になる。
 ペットショップで待望の犬を買い、自宅で飼いはじめた。アメリカンビーグルの可愛い牡の子犬だ。

 私は犬をブービーと名づけた。
 お手 おかわり お座り マテ 探せ 持って来い、、子犬はみるみる覚えてくれた。
 テーブルに足をかけてはいけない事や トイレの場所も 教えた事は何でも覚えてくれたので、しつけは楽なほうだったと思う。

 犬のためのケージは無く、私のふとんに入って寝るのが普通だった。


 写真は、姉の家の犬だったイングリッシュビーグルの「ルーシー(左)」と一緒の写真。
 このときブービーは体重1.5キロしかなかった。
・・・・自営業 開店 そして突然の閉業・・・・
 犬を飼い始めてまもなくの頃。
 当時の私のつれあい(夫)が、自分で飲食店をはじめたいと言い出した。すでに場所もあるという。
 お金は無いが 銀行と自分の親・親戚に全部借金すればいけるというのだ。

 つれあいの甘い性格を考えても 提示してきた場所を考えても、どうにも無理と思われた。
 ずいぶん説明して説得したが、女の話などまともに聞くタイプではなく、ついに押し切られた。
 それならば協力してやっていくしかないと、私もがんばる方向に転換した。

 しかし悪い想像はすぐさま現実のものとなった。
 店をはじめてたった5ヶ月で、つれあいがすっかりやる気をなくしてしまったのだ。
 まだ赤字になったわけでもなく、資金がまわらなくなったわけでもない。
 それでも、
 店を開く=自分の好きなようにできて楽 と思っていたつれあいには、思うように儲からない事(その上に、店の金を自由にしたり好きな時に休めば自分の首がしまるという現実)に疲れてしまったという。

 私の協力の申し出も もう少しがんばろうという励ましも、彼には馬耳東風といった様子。
 そしてどうやら、つれあいの親友が、この場所はだめだと言ったのがもっとも堪えたらしい。

 もはや つれあいの頭の中には やめるという文字しか無いようだった。
 そして銀行の借金だけ何とか返し、親と親戚に借りた分の借金だけが残った。
・・・・そして転居・・・・
 私たちが店をやっている時に住んでいたのは店舗の2階だったので、店をやめるにあたって さしあたり新しい住居に移る必要があった。
 手持ちの金が心細かったので、アパートでも何でも犬と住めれば良いではないかと訴えた。

 だがつれあいはどうしてもマンションと名のつくところで、しかも店から離れた土地が良いと言う。
 私たちは遠い土地の不動産店に、犬が飼えるマンションはないかと相談した。
 犬の大きさや、大人しい犬である事、めったに吼えない事を説明したが、あまり興味は無いようだ。

  不動産店の営業マンがすすめてくれたのは、Aという賃貸マンションだった。
 ここは ペット禁止というきまりはないし、実際に犬を飼っている人が数軒いるので 大丈夫だ、というふれこみだ。
そして私たちは Aマンションに入居した。
・・・・大家との遭遇・・・・
 私の犬は 元々めったに吼えない犬だった。
 散歩にも 買い物にも いつも連れて行ったので留守時に鳴くという事も無かったし、少なくとも引越し先では最後まで一度も吼えなかった。
(いやいっそのこと吼えまくったならまだしもだ)

 私たちの住まいはマンションの1階で、窓を開けると垣根もないまま、1軒屋の庭になっていた。
 なんとそれは、Aマンションの大家の自宅だということが、住んですぐに判明した。
 庭に隣接しているため窓はスリガラスになっていたが、床から窓サッシまでの高さが低いので、何かの拍子に犬が庭に飛び出す事もないとはいえず、私は犬が出ないようにと、洗濯物を干す時以外は窓を開けないようにしていた。

  しかしある日、ちょうど窓を開けた時に大家が庭掃除しているところに出くわした。
 そして向こうから声をかけてきた。
 その瞬間、犬は声につられて窓枠に手をかけ、顔をひょいとのぞかせてしまったのだ。
  大家はすぐに犬に気づき、そして顔をしかめて
「あら!!大きな犬! 困るわ、そんなの飼ってもらったら!」と叫んだ。
 それを聞いて、私は自分の血が音を立てて引いた気がした。しかしそれでも 私は必死に抗弁した。
「あの、鳴かないんです。本当に。人も絶対噛みません。怖くないです、大丈夫です」
「だめ、ダメよ。そんなに大きい犬!怖いわ!」
「そんなに大きくないです。それにあの、不動産屋さんに犬かまわないって聞いて、それで私、」
「え?ここはペットはダメですよ。とにかくその犬、なんとかしてくださいね。困りますから」

  窓越しの話し合いは 見事に決裂した。
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